泉州タオルと今治タオルの違い|泉州タオル・くまさんのタオル
こんにちは😊
くまさんのタオルの「くまさん」こと秋島です。
本日は、くまさんのタオルが、なぜ薄手のタオルに力を入れるのか?という切り口から、今治タオルとの違い、更には3大メーカーとも言われるおぼろタオルについても 番外編として記事を書いてみたいと思います。
泉州タオル
「泉州(センシュウ)」・「今治(イマバリ)」というのは、皆様ご存知の通り日本の2大メーカーとして、国産タオルを牽引しているブランドです。
その歴史は、泉州1887年・今治1894年に、それぞれ創業し現代まで100年企業として続いております。(2023年時点で先週は135年、今治は128年)
泉州タオルは、日本で最初のタオルメーカーです。現在の大阪の泉佐野市で起業しました。
その数年前にヨーロッパからの初の輸入品として「タオル」が輸入されたという記録が残っています。最初のタオルは、マフラーのように細長い物だとも言われています。
また、当時はまだタオルは高級品で、今のように庶民が手軽に入手できるものではなかったとも記されています。
当時の日本は手拭文化だったので、手拭き、顔拭き、汗拭きは、全て「生地(手拭い)」が担っていたと思われます。
これは今では「タオル」の役割にあたる部分ですね。
話を進める前に、手拭い(生地)とタオルの違いを説明した方がいいですね。
違いは「パイル」が有るか無いかです。
生地や木綿は、経糸(縦糸)と継子(横糸)で、平織りなどで織られている形状です。
この経糸と横糸の間に8の字で上下に糸を通した糸がパイルです。
このパイルが、肌触りの良さ・厚さを出していきます。
タオルの発展と歴史は、パイルの発展と歴史といえるでしょう。
話を戻します。
当時、手拭い文化の日本人には、薄手のタオルの方が受け入れやすいと考えたのでは無いでしょうか?
また、最初にタオルが輸入された時は、高級品で庶民が使えるものではなかったことや、マフラーのように長いものだった、という事は薄手にせよ、厚手にせよ、そこそこの目方があった筈なので、値段が安くなりません。
庶民向けに目方の少ないものを・・・と、考えると「薄手のタオル」という選択になっていったのでは?と想像します。
庶民が買えて、使い勝手もよく、更に、タオルが広まっていくために、泉州タオルは薄手の使いやすい、一般使いのタオルを構築していったのでしょう。
今治タオル
一方「今治タオル」です。
泉州タオルの創業7年後(1894年)に、愛媛県今治市でタオル製造を始めたのが1番最初の形だったと言われています。
後で詳しく書きますが、「泉州タオル」と「今治タオル」の最も大きな差は、「厚みを調整するための筬数の設定」です。
わかりやすく言うと、泉州タオルは薄手によっていて、今治タオルは厚手によっている、という特徴に現れます。
これは想像ですが、7年の歳月を1社独占でタオルを広めていった泉州タオルと、全く同じ土壌でタオルを作るのは絶対的に不利だと思うので、少し違いをつけるために厚手に寄せたタオル作りを選んだのでは無いでしょうか?
※上の図は、現在の販売されているフェイスタオルの目方です。一部例外的な商品もあると思いますが、ほぼこの位の数値に治まります。
図の通り70〜105グラムのタオルは、両社ともに製造していますので、特徴的なタオルとしては、泉州タオルでは、浴用タオル・温泉タオルや、昔からの定番の薄手200匁(62グラム)あたり、今治タオルなら105グラム超えともなると、ホテル仕様や、かなり豪華な贈答品用のタオルとなります。
今治タオルの厚手思考は、欧米のタオルの目方(筬数<おさすう>)と、近いものがあります。
欧米のタオルは、元来、目の詰まった目方の重たいタオルが一般的で、現代の日本のように柔らかい風合いの良いタオル作りというよりも、身体の大きな西洋人の吸水量に対応した目方重視のタオル作りをしているように見受けられます。
一方、泉州タオルも今治タオルも厚さとは無関係に「柔らかさ」を追求している節があります。
「いつからか?」と言うことになりますと、何ともお答えができないのですが、催事販売をしている現在、「ふわふわ」「柔らかい」ということは、たくさんのお客様が求めていると感じます。
その意味で、欧米のような多めの筬数でタオルを織っても、泉州・今治は柔らかくなるように設計したり、糸選びをしています。
こんな話を聞きました。
若かりし頃、海外に学びに行った泉州の職人さんが、帰国後「欧米のようなタオルを売る。」という話をしたところ、「日本では売れないよ」と言われたそうです。
業界的にも欧米のタオルの織り方は日本人には受けない、というデータが既にあったのですね。
私自身は、欧米の一般的なタオルを検証したことはないのですが、作り方としては共通なので、私なりの見解を述べさせていただきます。
①吸水量を多くするために、目方を増やすための筬数(経糸の本数)が多い設定で目の詰まった設計をする。
②柔らかさよりも、吸水スピードを優先する。
③しっかりとした丈夫なタオルを作る。
こんな視点から設計すると、日本人向けの風合いの良い(パイル長の長い)設計よりも、よりスピードのあるショートパイルを選択することで、同じ目方のタオルでも上記を満たすことになります。筬数がより多ければショートパイルでも更に厚みも出すことが可能です。
※「柔らかいタオル」にするには、目を詰めすぎない・パイル長を長めに設計する・細い糸を使用する・スーピマなど(無撚糸)の柔らかい糸を使用する・オーガニック綿糸を使用するなどが代表的な手段です。
恐らく、上記の手段を用いて、日本人受けの良い「柔らかいタオル」は作られていると思います。
厚手を担う今治さんは、特に意識して設計・選定している筈です。
ちょっと遅れましたが、「筬数<オサスウ>」を少しご説明した方がいいですね。
タオルを織る機械「織機」と言いますが、実は種類が結構あります。
経糸(縦糸)の本数(筬枚数)の差が大きく関わっています。
筬枚数が多いほど、目が細かく織れるので、パイルも多く、目方の重い、厚いタオルができるのです。パイル量が多めにも設計出来ることで、ふわふわ感を調整する余裕にもなります。
逆に、筬枚数(縦糸)が少ないと、パイル量に限界があります。
具体的には、一般的なフェイスタオルのサイズが34cm×84cmだとします。泉州タオルの筬枚数37枚〜40枚代前半だと、いい所105g〜113g程度までしか織れません。(これは、糸の太さを変えることや、織機の設定で調整されることで、技術の問題とは関係ありません。)
一方、今治タオルでは、170g位のフェイスタオルを織れるように設定されているメーカーさんもあります。但し、同じ織機で薄いタオルは織れなくなってしまいます。
この筬数の設定、変えられないことも無いらしいのですが、かなり大変らしく。ほとんどのメーカーさんは、購入時に設定した筬枚数を変更しないものと聞いたことがあります。
このように、厚さの部分(目方)において、どちらかを選択しなければならず、そこが「泉州」「今治」の特色を出していると言えるでしょう。
余談ですが、
ある方が今治に名入れのタオルを注文したら、それだったら泉州に頼んだ方がいい、と言われたという話があります。
また、私個人も御用達の泉州のメーカーさんに「こんなタオルを作りたい」と言ったところ、それは四国(今治)に頼んでください。と言われました。
メーカーまで紹介してくれると言うご親切なお話でした。
世の中では、泉州と今治は商売敵と思われがちですが、実際には同じ日本タオル組合のメンバーですし、「喧嘩してもしょうがない」と思っているようですし、共存・繁栄が1番いいですね。
当時の人々の価値観や需要は分かりませんが、後に豊かになった日本では、冠婚葬祭のお品物として、タオルを選ばれることが多くなりました。
贈答品となりますと、それなりの価格帯が必要になるので、「厚手」のタオル(80〜100グラム程度が主流)は重宝されました。
逆に、商店や会社などの年始の挨拶や、粗品用には、単価の安い薄手のタオル(54〜62グラムが主流)が人気がありました。
この目方の棲み分けに、泉州タオルと今治タオルの差が一つあります。
泉州タオルは、薄手によっていて、今治タオルは厚手によっているというのは、ある意味で上手く棲み分けされて、共存できた形と言えるでしょう。
現在では、「今治タオル」のネームバリュは、相当なものですね。
後に、目方の重い(厚手)のタオルは、そのリッチ感や贈答品としての価格帯が時代にフィットして、また今治タオルを広めるために組合も努力し、優れたイノベーター「佐藤可士和」氏(クリエーターなどの肩書きを持つ)によって、様々な取り組みがなされ、今では日本一の売上高・生産量を誇っています。
泉州タオルを掲げて催事販売をしているのに、「今治?」と聞かれることがしょっちゅうあります。
それだけ「今治タオルは1番いいタオル」という意識を日本人に洗脳するために、四国の組合が努力した結果が、今の「泉州」と「今治」の知名度の差になっています。
泉州タオルと今治タオルの製法
もう一つ大きな差としては、泉州の「後染め・後晒し」に対して今治は「先染め・先晒し」と言う、これまた真逆の製法です。
「後晒し」は、タオルの全体像が完成した最後に「晒し」をすることで、確実な吸水性を与えます。ただし、晒すことで色を汚染するリスクが出てくるので、今治と比較すると、デザイン製には乏しくなります。
今治は、デザイン性に富、織り方も泉州よりも多彩なように感じます。
それは、「先染め・先晒し」を採用することで可能になるのでしょう。
但し、あまりやり過ぎるとバランスを崩してしまうことがあるのも事実です。普通に作れば、吸わないタオルはできないのですが、私のお客様から、「今治タオル買ったのに吸いが悪い」と言ったこともチョイチョイ聞いています。
とても、残念なお話ですが、近年の「今治人気」で新たに参入するするメーカーも多く、老舗と同じクオリティーに作れるまでには、ある程度の時間が掛かるのはやむおえないことでしょう。
泉州タオルも、私自身、どちらのメーカーも同じ出来では無いと感じております。今では、今治タオルのようなメーカー数(100社以上)はありませんが、一通り吟味して、今の4社さんに今のところお願いしております。他にも2〜3社お付き合いしたいメーカーさんがありますが、今はその時では無いようです。
泉州タオルの温泉タオル
そんな、日本の2大タオルを紐解いて思うに、縁あって泉州タオルとお付き合いさせていただいている「くまさんのタオル」としては、泉州の薄手のタオルに着目しない訳にはいきませんでした。
56グラム〜62グラム位のタオルでは、他に肩を並べるブランドがない訳ですから。
そこで、くまさんのタオルが最初にシリーズ化したのが「めっちゃ可愛い❣️くまさんの温泉タオル」シリーズでした。
薄手の浴用タオルとは思えない、最高の風合いとプリントの可愛さ、同じ地のタオルで、白無地・カラータオルのバリエーションもあります。
私自身が温泉大好きで、色んな旅館やお風呂を巡っておりますが、ウチのタオルより気持ちいい温泉タオルにはまだ出会えておりません。
それ位、見事なタオルを作っていただいております。
是非一度、泉州タオルの温泉タオルをご利用ください。
番外編・おぼろタオル
「泉州」「今治」と並ぶ3大タオルと言われるブランドがおぼろタオルです。
こちらも歴史が古く1908年創業(2023年現在、115年目)です。
1927年(創業から19年後)に「二重袋織りガーゼタオル」が高いhy方かを受け、現在でもおぼろタオルは、ガーゼの柔らかさを連想させます。
それも事実ですが、「おぼろ」の元々の意味があります。
ちょっと風変わりな話ですが、この「おぼろタオル」の創業者は名を森田正三郎といい、日本画家としても才能のある方だったそうです。
当時の無地タオルに模様を描こうと考えました。
その手法が、横糸だけを染めて柄を出すというやり方で、経糸や、パイルは地の色なので、模様が奥の方で霞んでいるように見えるわけです。
その様が「おぼろ月」の「おぼろ」から「おぼろ染め」と名付けられ、その人気は国内を一世風靡したと記されています。
実際に泉州タオルでも、その染め方に習って商品を作っています。捺染タオルという商品です。
1980年代頃からでしょうか、時代が厚手を求めっていったことや、消費者の好みの変化、中国製の安価なタオルの台頭などで、おぼろタオルは厳しい状況に追い詰められていくことになります。
その危機を救ったのが、同じく苦境に立っていた浅野撚糸の「エアーカオル」の大ヒットでした。
浅野撚糸は糸を撚る会社で、タオルは織らないので、最初におぼろタオルと始め、大ヒットになることで、生産量確保のため、今治タオル、泉州タオルでも「エアーカオル」製造の依頼を受けていくことになります。
エアーカオルのシリーズが3種類あるのはこのためでしょう。
泉州タオルでは、このご縁で浅野撚糸の特許を持つ「スーパーゼロ」という糸を使わせていただき、「スフレール」という名のタオルを販売させていただいております。
「エアーカオル」は20番手の糸で、「スフレール」は16番手になっています。
※「番手」は糸の太さを表す単位で、数値が小さいほど糸が太くなります。
この「スーパーゼロ」や「スフレール」についての詳細はこちらです。
今では、エアーカオルの大ヒットで、両社とも立ち直っているようです。
日本の素晴らしい技術や精神が残ったことが、本当に嬉しく思います。
最後まで、読んでいただきまして、誠にありがとうございます。
また、面白い話や、一般の方には、あまり知られていないタオルの話がありましたらアップしていきたいと思います。
くまさんのタオルのHPにも、是非来てください。
関連情報
泉州タオル|くまさんのタオル
くまさんのタオルでは、日本初のタオルメーカーである泉州タオルの販売をしております。ハンカチやフェイス、バスタオル、オリジナルキャラのプリントタオルなど、普段使いにおすすめのラインナップをご用意しております。抜群の吸水性と柔らかさで、皆様にずっと愛され続ける商品を安くお届けしたいという想いで当社を設立いたしました。
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